microCMS

microCMSのProduct-Led Growth戦略

柴田 和祈

こんにちは、柴田です。

突然ですが、Product-Led Growth(PLG)という言葉をご存知でしょうか?
Zoom、Slack、Shopify、Notion など急速な成長をみせる海外スタートアップたちがこぞって実践している成長戦略のひとつです。

PLGと対になる概念としてSLG(Sales-Led Growth)があります。
SLGはその名の通り、セールスがプロダクトを売っていく考え方で、その代表的なものとして「THE MODEL」が挙げられるでしょう。

一方で、PLGは「プロダクトでプロダクトを売っていく」という考え方を指します。
簡単に言うと、ユーザーにプロダクトを実際に触ってもらって、価値を感じてもらい、有料版へと誘導していくのが基本的な考え方です。

日本でPLGを実践している企業はまだほとんどおりませんが、microCMSはエンジニア向けのサービスとしてPLGと非常に相性が良いのもあり、成長戦略としてPLGを掲げています
(エンジニアは基本的にセールスを受けても鵜呑みにせず、自ら調査・比較し、サービスを選定します・・・)

結局のところ、良いプロダクトを提供することが長期目線では最も効果的と言えます。

「良いプロダクトを作れば売れるというのは間違い」
「ちゃんとセールスする必要がある」

という言説もよく目にしますし同意もしますが、microCMSというサービスはプロダクトに全力投資することがグロースのために最も効果的だと思っています。

本記事では microCMS が Product-Led Growth の下に具体的にどんなことをしているのかを紹介していきます。

フリーミアム / フリートライアル

PLGを語る上で必ず出てくる話題として「フリーミアム / フリートライアル」があります。
PLGを実践するためには、とにかくまずはプロダクトを触ってもらわなくてはならないので、無料でアカウント登録ができることが必須です。

microCMSはリリース当初からアカウント登録は無料で開放していたのですが、法人に限っては有料のフリートライアルが必須というフローとしていました。
ざっくり言うと、無料プランは個人エンジニア向け、有料プランは法人向けという分け方です。

microCMSはブログ構築やポートフォリオ作成用途などで個人エンジニアの方に使っていただくケースが多く、個人エンジニアに対しては無料で不自由なくサービスを堪能していただきたいという想いがありました。
(そして、その個人エンジニアがプロダクトに満足し、所属する会社に紹介導入いただくという流れを想定していました)

法人にとっても、2週間のフリートライアルで「まずはプロダクトを触ってもらう」ということは達成できていたのですが、以下のような問題がありました。

  • トライアル後にプロダクトを使い続けるには課金する必要がある
  • 小規模な利用でも「法人」という理由だけでお金がかかってしまう
  • 逆に大きめなサービスを運用する「個人」は無料で運用ができてしまう
  • 実際はこっそり無料で利用している法人も相当数いる


これらを解決するために先日(2022/01/17)料金改定を行い、法人でも無料プランのご利用を可能としました。
まだmicroCMSを試したことがない方、この機にぜひ触ってみてください。

バリューメトリクス

PLGにおいて重要な概念としてバリューメトリクスあります。
日本語訳すると、「価値の測定基準」というところでしょうか。

バリューメトリクスは、プロダクトのプライシング、プロダクト指標、そしてチーム編成において重要な役割を担います。

例えば、SlackやNotionであればメンバー数がバリューメトリクスとなります。
メンバー数が増えれば増えるほどサービスの価値を享受できるということで、それに応じてサービスの利用料金が上がっていきます。

では、microCMSにとってのバリューメトリクスは何でしょうか?

microCMSはかなり複雑なデータ構造を持っていて、単純に「メンバー数」のみがバリューメトリクスではなさそうです。
バリューメトリクスを決める上で、実データ(アクティブなアカウントを対象)を元に各プランごとにどの指標が高くなっていくのかを測定しました。

API数の調査例

下記の円グラフは、プランごとのAPI数の分布割合を表しています。
具体的な数値は伏せておりますが、青・赤・黄・緑...の順にAPI数は増えていきます。

水色は多数のAPI数を示しますが、プランが上がるごとにその割合は増えています。
よってmicroCMSのバリューメトリクスの一つとしてAPI数が挙げられそうです。

他にもコンテンツ数、メンバー数、Webhook数、カスタムフィールド数など各指標について傾向を調査しました。

これらの調査から、バリューメトリクスを「データ転送量」「API数」「メンバー数」の3つに絞り、それぞれプランごとに最適な閾値を設定しました。
それが今の料金プランに反映されています。

バリューメトリクスの値が増えるほどユーザーは価値を感じられているという状態となるため、これらを増やすための施策をおこなっていけば良いというわけです。
方針はかなり明確になります。

バリューメトリクスはそのまま従量課金を適用しているため、ユーザーが価値を感じられるほど、対価である利用料は増えていくという構図になります

ボウリングレーン・フレームワーク

ユーザーはプロダクトの価値をちゃんと享受できているのか?
もしできていないとしたら、どこで躓いているのかをしっかりと見極め、正規ルートに戻してあげる必要があります。

正規ルートをボウリングのレーンに見立てた「ボウリングレーン・フレームワーク」という考え方を紹介します。
ボウリング同様、ボールがガターに落ちないように左右2本のバンパー(プロダクトバンパー、コミュニケーションバンパー)で支えてあげます。

プロダクトバンパー

プロダクト内部で、ユーザーが自らプロダクトの価値にたどり着けるようサポートします。
ウェルカムメッセージやオンボーディング時のプログレスバー、機能紹介のツールチップなどもこれにあたります。

microCMSでは一番最初の成功体験(クイックウィン)を「APIプレビューの実行」と定め、そこまでのフローを改善する施策を進めています。(現在進行中)
クイックウィンまでの到達率をファネルで常に表示できるようにし、毎週改善を重ねています。

例えば、今まではサービス作成フローは「サービスの基本情報入力→サービス画像選択→料金プラン選択」という3ステップが必要でしたが、現在はワンクリックで作成可能になっています。
(元々の動きを覚えている方はぜひお試しください)

他にも、セールスの代わりにプロダクト自身がプロダクトを売るためにさまざまな施策が考えられます。

例)

  • 有料プランの機能をプロダクト内でお試しできるようにする
  • バリューメトリクス数に応じて何らかの案内を出す
  • ドキュメントの拡充
  • etc...


このようにユーザー自身が自発的にプロダクトをどんどん使い、価値をより享受していくのを手助けしていくのがプロダクトバンパーの役割です。

コミュニケーションバンパー

プロダクト内部からのサポートだけなく、外部からのサポートとしてコミュニケーションバンパーがあります。

  • アカウント登録をしてくれた際の「ウェルカムメール」
  • 使い方に迷った際の「利用ガイドメール」
  • ユースケースを認知させるための「ケーススタディメール」


等々、こちらも様々な施策が存在します。
これらのメールをセールス担当に手動でお願いすると、とてつもなくマンパワーが必要になってしまうので、マーケティング・オートメーション(MA)ツールを利用していきます。

microCMSではHubSpotをフル活用しています。
HubSpotはCRMとMAツールを兼ね揃えたサービスで、ユーザーの属性や行動に応じてメールを自動で出すなど、様々なアクションを行うことができます。

できる限りユーザーの情報をHubSpotに同期し、本来セールス担当が行うであろう作業をすべて自動化することを目指しています。(今まさに実施最中です・・・)
microCMSのエンティティ構造に合わせてHubSpotでのデータの持ち方を設計し、プログラマティカルにデータの同期を行なっています。

これらにより、SaaSに必要不可欠と言われるセールス人員コストを限りなく抑え、逆にプロダクトの磨き込み(エンジニアリソース)に資金を注ぎ込むことが可能です。

データ分析

PLGにおいてはデータ分析がかなり重要です。
プロダクトバンパーやコミュニケーションバンパーによって、ユーザーが価値を享受できるようになったのか?を常に計測し、改善につなげていく必要があります。

弊社では分析専門のスペシャリストも在籍しており、基本的には分析とセットで施策を進める体制を心がけています。

おわりに

microCMSはProduct-Led Growthに本気で取り組んでいます。
プロダクト開発以外はできる限りすべて自動化していきたい意気込みです。

PLGでは全ての部門がプロダクトにつながっており、マーケティング・セールス・カスタマーサクセスからのインプットを全てプロダクトの改善に活かすことができます。
PLGを進める上で組織体制が難しいのですが、いろいろと模索しながら進めています。
(3ヶ月単位くらいで組織編成が大きく変わっています)

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柴田 和祈
microCMSのデザイン、フロントエンド担当 / ex Yahoo / 2児の父 / 著書「React入門 React・Reduxの導入からサーバサイドレンダリングによるUXの向上まで 」 / Jamstack