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Cookie規制・IDFA使用制限とは?サイトやアプリへの影響と対策を解説

工藤 港

2022年4月1日から改正個人情報保護法が施行されました。
ユーザーのプライバシー保護の観点から、AppleはSafariの「ITP ※1」という形でサードパーティCookieを廃止、GoogleもサードパーティCookieを2023年に廃止することを発表しています。CookieはWebブラウザの話ですが、iOSアプリでもIDFAの使用に制限がかかるなど、同様の動きが始まっています。

日本国内におけるWebブラウザのシェアは、Google Chromeが約50%・Safariが約27%となり、日本国内で利用されているWebブラウザの大半でサードパーティCookieが利用できなくなることを意味し、影響が大きいことがわかります。

参考:statcounter

また、スマートフォン機種のシェアについてもiPhoneユーザーが約56%以上と、こちらもIDFAの使用に制限による影響も大きいと言えます。
出典:webrage「日本国内スマートフォンシェアランキング(2021年6月)

現在、サードパーティCookieを使ったトラッキング ※2 分析ができなくなることで、Cookie利用に関する同意事項を表示するWebサイトが徐々に増えており、Cookieレス時代の到来とも言われています。

今後、プライバシー保護に重点を置く流れはますます加速していくことが予測され、CookieやIDFAの規制の要件を満たした上で、より良いサービスを提供するためのWebサイトやアプリの運用・機能開発は、避けられない課題になっていくでしょう。

この記事では、CookieやIDFAの規制によるWebサイトやアプリへの影響と対策をテーマに、今後の流れを考察します。

※1 ITP(Intelligent Tracking Prevention)とは、Apple社がユーザーのプライバシー保護を目的として、Webブラウザ「Safari」に搭載されたトラッキング制限機能のこと。

※2 トラッキングとは、Webサイトに訪問したユーザーの行動データ(閲覧ページ、ページ滞在時間など)を追跡・収集・分析すること。ユーザーが自社の商品やサービスの何に興味関心を抱いているのか把握したり、Web広告配信の際にクリック数やコンバージョン数の把握や、広告の改善・検証に活用される。


Cookieとは

Cookie(クッキー)とは、Webサイトの提供者が、利用者のWebブラウザに保存できるデータを指します。
用途としては、ユーザーの行動情報の保持に用いられることが多く、「ページ訪問日時」「ページ流入経路」「閲覧・購入履歴データ」「ユーザーのログイン情報」などが保存されます。

Cookieを活用してトラッキングをすることで、例えば、自動車に関するサイトやページを閲覧したユーザーに、

  • 自動車製品のレコメンド(Webブラウザでの閲覧・購入履歴データをもとに、おすすめのアイテムやコンテンツを表示)する
  • 自動車試乗の無料トライアルを促す広告を配信するなど、広告ターゲティングの最適化(キャンペーンの目標を達成する可能性の高い新規ユーザーを自動的にターゲティング)をする
  • パーソナライズ化した顧客体験の提供する

といったことが可能になります。

Cookieはユーザーの趣味や興味関心などのデータを持つことから、Webマーケティング施策において貴重な情報源となり、ユーザーが求めるサービスの提供、製品開発、広告掲載などに広く活用されてきました。

Cookieの種類

CookieにはファーストパーティCookie・サードパーティCookieの2種類があり、大きな違いは発行元です。

▼ファーストパーティCookieとサードパーティCookieの関係を表した図。ユーザーが訪れているサイト自身から発行されたものがファーストパーティCookie、そうでない第三者から発行されたものをサードパーティCookieと呼びます。

ファーストパーティCookie

ユーザーが訪問しているWebサイトのドメインが発行するCookieを指します。このCookieは、アクセスしたWebサイト内の閲覧履歴やログイン状態の維持のために使用されます。


例えば、一度ログインしたことがあるECサイトを再訪問した際、パスワード再入力が不要でログイン状態が維持される現象は、ファーストパーティCookieを利用していることが考えられます。Webブラウザ側でユーザーのログイン情報を保存することで実現でき、ECサイト運営者はユーザー情報の判別が可能です。


一方で、ドメイン毎でしかCookie付与ができないため、サイト横断ができないというデメリットもあります。


一般的にファーストパーティCookieは、ユーザーからブロックされにくいため、トラッキングや効果測定の精度が高いのが特徴です。

サードパーティCookie

ユーザーが訪問しているWebサイト以外の第三者のWebサイトのドメイン内で発行されるCookieを指します。

例えばブログにアフィリエイト広告がある場合、Webブラウザがその広告を読み込むことで、今閲覧しているブログとは別のサイトのドメインリソースが含まれていて、サードパーティCookieが発行されます。

実際に、Webブラウザのデベロッパーツールで見てみると、ファーストパーティCookie以外にも、さまざまなサイトからCookieが発行されていることがわかります。

サードパーティCookieを使えば、ユーザーの意思とは関係なく、複数サイトを横断したトラッキングが可能になり、主にWebのターゲティング広告で利用されています。


例えば、ある中古車サイトで商品ページを閲覧後、全く別のニュースサイトに訪問した際に、先ほど見ていた中古車サイトのバナー広告が表示される現象は、サードパーティCookieを利用していて、その広告はサイトのドメインではなく広告サーバーから配信されていることが考えられます。


今回の規制では、大半のWebブラウザでサードパーティCookieを使ったトラッキング分析ができなくなるのです。


IDFAとは

IDFA(Identifier for Advertisers)とは、iOSの端末毎に割り振られるIDを指します。
Cookieはブラウザ毎に割り振られるのに対して、モバイル広告IDであるIDFAは、スマートフォンやタブレットなど1端末につき1つしか存在しないユニークなIDで、取得した情報がどのユーザーの情報なのかを紐づけることが可能です。

このIDFAを利用して、ユーザーの傾向や属性の分析を行いターゲティング広告配信を行ったり、効果測定によりアプリの改善やメッセージ設計などに使われてきましたが、2021年4月にリリースされたiOS14.5から、IDFAによるトラッキングの制限が行われています。

以前はIDFA取得について、オプトアウト方式(ユーザーの行動追跡を行うことに対して、デフォルト設定が「許可」の状態)でしたが、オプトイン方式(ユーザーによる明確な許諾が必要で、デフォルト設定が「不可」の状態)へと移行しています。

またAndroidでも、2021年10月にリリースされたAndroid12から、ユーザーがオプトアウトした場合、モバイル広告IDの取得ができなくなりました。

Cookie規制、IDFA変更が与える影響

サードパーティCookieを使ったトラッキング分析ができなくなることやIDFAのトラッキング制限により、影響を受けるものがいくつかあります。

広告配信への影響

リターゲティング広告やオーディエンスターゲティング広告

リターゲティング広告とは、一度サイトに訪問したユーザーを追跡して配信される広告のことで、その仕組みは、

  1. 各媒体が用意しているトラッキングコードをあらかじめWebサイトに設置しておく(広告主)
  2. ユーザーがサイトに訪問した際にCookieが付与される
  3. そのCookie情報から訪問ユーザーをリスト化したデータに広告を配信する(広告主)

といった流れになります。

現在、ITPではサードパーティCookieが完全に制限されているため、iOSを利用しているユーザーがWebサイトにアクセスした際に発行されるCookie情報が入手できず、リターゲティング広告の材料となる情報が十分に得られないなどの影響が考えられます。

また、サイトの訪問ユーザーのデモグラフィック(性別・年齢・居住地域などのユーザーの属性)や、行動履歴や商品購入履歴による興味関心データを利用したオーディエンスターゲティングも影響を受けます。同様に、CookieやIDFAから情報を取得しているため、規制により必要な属性情報取得ができず、広告の成果が低下してしまう可能性が高いです。

Googleが2019年8月に公開した文書によると、Googleの広告ネットワーク配信を行う世界のサイト運営者の一部のサンプルに対して、サードパーティCookieへのアクセスを無効にしたところ、上位500のサイト運営者は平均収益が52%減少するという結果が出たとのことです。

出典:Google「サードパーティクッキーを無効にした場合のサイト運営者の収益への影響

サードパーティCookieを活用した行動ターゲティング

これまでサードパーティCookieから得たユーザーデータは、サイトの訪問ユーザーのデモグラフィック(性別・年齢・居住地域などのユーザーの属性)、興味関心カテゴリ(行動履歴や商品購入履歴など)を組み合わせたデータを利用を行い、特定のユーザーと似たユーザーを追跡して広告配信を行う類似ターゲティング広告に利用されてきましたが、こちらにも影響が出ます。

広告配信時のターゲティングにブレが出て、見込んでいたコンバージョンに達しない可能性が高くなり、広告配信の成果が思うように出ないなどが予想されます。

アプリエンゲージメント広告

iOSでは、IDFAの制限によりアプリを通して得られる情報が少なくなります。ターゲティング可能なIDの総量が減ることにより、ターゲティング広告のインプレッションが減るなど、広告配信の成果が思うように出ないなど影響が出ることが予想されます

効果計測への影響

コンバージョン計測

アフィリエイト広告などの各広告媒体や、Google広告やLINE広告などのWeb広告の効果測定にCookieを使用している場合、コンバージョン計測も影響を受けます。

例えば、広告経由でサイトに訪問し、24時間以上経過した後に別の経路でサイトに再訪問した際にコンバージョンした場合、初回訪問のきっかけとなった広告媒体側からコンバージョン計測ができないケースがあります。

また、これまで計測に活用していたIDFA利用がユーザーの許諾制になることで、広告媒体側からはiOSユーザーのコンバージョンが実態よりも低く計測されてしまうことになり、iOSへの入札控えが起きて機会損失につながることも予想されます。

アトリビューション分析

アトリビューション分析とは、直接コンバージョンにつながった流入経路のみならず、ビュースルーコンバージョン(広告が表示されて日にちをおいてから異なるルートでコンバージョン)も含めて、コンバージョンに至るまでの全ての流入経路を分析し、各広告媒体の貢献度を正当に評価するための手法です。

ITPにより、サイトに訪問してから24時間以上(自然検索などの流入は7日間)経過した後のコンバージョンは、Cookie取得が制限される場合があるため、コンバージョンに至るまでの適切なデータ収集や広告の課題抽出、予算配分の最適化などが困難になります。

Googleアナリティクス(アクセス解析)への影響

Googleアナリティクスでは、ファーストパーティCookieを利用してデータを取得しています。通常、ファーストパーティCookieは2年間有効ですが、iOS上で動作するブラウザの場合はITPにより最長7日間で削除されます。Cookieの保存期間が短くなったことで、実態よりもユーザー数が低く計測されてしまうなど、データ欠損が発生してしまうケースが発生します。

対策方法は?

CookieやIDFAの規制により、上記で述べたさまざまな影響が想定される中で、今できる対策方法について考察します。

ファーストパーティCookieの利用を主軸に整備

サードパーティCookieへの依存を避け、規制対象になっていないファーストパーティデータを収集し、活用する仕組みの整備重要です。

ユーザーのメールアドレス収集やサイト内での行動追跡のみならず、より深いインサイトを把握し、必要があれば見直しを行うなど、ユーザーに選ばれ続ける仕組み作りに比重を置くことが求められます。

Cookie同意管理ツールの導入を検討

ユーザーがサイトを訪問した際にCookie取得に関する同意の問いかけを行い、事前に同意をとった上であれば、Webでの行動履歴のデータ取得・活用すること自体は可能です。
きちんと同意を受けられるサイトかという点ではユーザーとの信頼関係が重要になりますが、自社で集めたファーストパーティデータは強力な武器となり得ます。

CDPやMAツールの導入を検討

サイトを訪問したユーザー情報の計測ツールや、その情報を効率的に利用できるツールの導入の検討も1つの方法と言えます。

データ収集や管理を得意とするCDP(カスタマー・データ・プラットフォーム)や、ユーザーへのレコメンドやプッシュ通知などを最適化するMA(マーケティング・オートメーション)ツールなど、ファーストパーティデータを活用して、サイトを訪問したユーザーの情報をいかに取得・活用するのかという点も重要になるでしょう。


ゼロパーティデータの活用

ゼロパーティデータとは、ユーザーが自発的に企業に提供するデータを指し、収集方法はアンケート・インタビュー・ランディングページ・プロモーションなどさまざまです。

ユーザーからの完全な同意のもと提供されるため、企業にとってはリアルなデータ取得・活用、ユーザー体験の向上につなげられるというメリットがあり、

ユーザーの課題や興味関心を収集し、理解を深める

→最適な体験・価値を提供し続ける

→ユーザーのエンゲージメントを高め、ゼロパーティ・ファーストパーティデータの蓄積

といった好循環が生まれることが期待できます。

効果計測ツールのアップデート

Googleアナリティクス4の導入

効果計測の影響でも述べたとおり、ユニバーサルアナリティクス(従来のGA)で正確な数値計測できないケースが発生します。
2020年10月14日に新バージョンとしてリリースされたGoogleアナリティクス4(GA4)は、Cookieに依存しないトラッキングの仕組みを用いた計測ができるようにアップデートされていて、ライバシー重視のトラッキングデータの蓄積が可能です。

It’s privacy-centric by design, so you can rely on Analytics even as industry changes like restrictions on cookies and identifiers create gaps in your data.

出典:Google MarketingPlatform「Introducing the new Google Analytics

GA4の導入がまだの方は、ぜひ早めの対応をオススメします。

▼GA4について詳しく知りたい方は下記のブログ記事をご覧ください▼
GA4ってなに?従来のGAとの違いと導入時のポイントを解説

オウンドメディアコンテンツの強化

リターゲティング広告をはじめとする有料広告の効果に影響が出ることから、これまで以上にオウンドメディアの役割と重要性が増し、ユーザーのニーズを満たす質の高いコンテンツを提供することが、1つの有効な方法と言えます。

ヘッドレスCMSの導入を検討

質の高いサイトやアプリ運用には、マルチデバイスに対応できるヘッドレスCMSの導入により、ページの価値を高めていく取り組みも1つの方法と言えるでしょう。
ヘッドレスCMSはAPIベースのため、Jamstackと呼ばれる最新の技術構成に非常に相性が良く、Jamstackはセキュア・スムーズなページ遷移といった特徴があり、サイトの高速化によりPV増加・ユーザーエクスペリエンスの向上・SEOのスコア改善にも繋がります。

参考記事:Jamstackとは何か?まずは基本を理解しよう!

参考資料:「ヘッドレスCMSの特徴」の資料請求
ヘッドレスCMSの特徴(メリット・デメリット)やWordPressなど従来のCMSとの違いを解説した資料です。

SNSなど他の集客チャネル・施策を強化

オウンドメディア以外にも、ソーシャルメディアなど他の集客チャネルの強化や、インフルエンサーとの関係構築、アンバサダー施策なども今後ますます注目されていくでしょう。

まとめ

CookieやIDFAの規制により、プライバシーファーストの潮流が強まる中、ユーザーの意思を尊重してデータを取得・管理しながら、サービスの最適化を図っていく必要があります。


また、Cookieの規制を受けて代替となる技術の開発も進んでいて、今後は主流となる可能性があります。
Googleでは、サードパーティCookieの代替案として「プライバシーサンドボックス(Privacy Sandbox)」を公表するなど、その動きは活発化しています。同様に各社で技術開発が進んでいるため、常に幅広くアンテナを張っておいた方がいいでしょう。

Cookieレス時代において、Cookieに頼らずに顧客理解を高め、ユーザーから選ばれるサイト・アプリ運用や顧客情報の管理・分析など、Web上のコミュニケーションについてあらためて見直してみてはいかがでしょうか。

まずは、無料で試してみましょう。

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