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【SCRAP様】ゲーム制作にmicroCMSを活用。分業体制を整えて作業を効率化

microCMS編集部

体験型イベント「リアル脱出ゲーム」の企画制作などを手がける株式会社SCRAP。2023年10月にはブラウザを操作しながら謎を解き明かしていくゲーム『サーチアカウント』を発表しました。実はこのゲームの開発にはmicroCMSが使われていました。ゲーム開発の現場でmicroCMSはどのように活用されていたのでしょうか。
 

SCRAPオンライン事業部の立耕平さんとコンテンツディレクターの黛孝祐さん、制作を担当した株式会社TAMディレクターの中村颯介さんとデザイナーの村松歩美さんに、microCMSの導入経緯や利用方法などをうかがいました。


導入の背景:ブラウザゲームの制作ツールとしてmicroCMSを選定

『サーチアカウント』がどんなゲームか教えてください。


-SCRAP・立さん

当社では体験型イベントとしての「リアル脱出ゲーム」をおもに提供していますが、コロナ禍を受けてオンライン事業部を立ち上げました。2022年2月に発表したデジタルゲーム『HOTELブルーローズの99の部屋』でもTAMさんたちにウェブ制作を担当いただいており、今回の『サーチアカウント』はSCRAPとTAMさんが組んだ第2作にあたります。
 
-SCRAP・黛さん
本作『サーチアカウント』はTwitter(現・X)のようなSNSを舞台としたゲームです。都市伝説やミステリーの要素が詰まったストーリーで、オカルト研究会所属の大学生のSNSアカウントを操作することで謎に挑んでいくといった内容です。
 
-TAM・村松さん
私たちTAMは、デジタルエージェンシーとしてクライアント企業様のDX支援を行っており、ウェブサイトやアプリケーション、SNS広告など幅広く制作しています。SCRAPさんとは前作『ブルーローズ』からご一緒させていただきました。

ゲームリリースの1年ほど前に企画がスタートして、まずは私の担当するデザインチームが中心になってキャラクターデザインなどを制作していきました。エンジニアを含む開発チームが動き始めたのは5月頃ですので、いわゆる開発期間は6か月ほどとなります。

ゲーム開発にmicroCMSを利用した理由を教えてください。


-TAM・中村さん
プロジェクトの前提としてCMSを使いたいという事情がまずありました。「謎解きゲーム」の制作では、何度もテストプレイを繰り返しながら細かいデザインやテキストの内容、イベントの発生するタイミングなどを微調整していき、「解く楽しさ」を追求する必要があります。前作『ブルーローズ』では、デバッグをするたびに要素をワンストップで変更することになり、エンジニアチームへの負荷がかなり高くなってしまいました。進行の遅れやヒューマンエラー発生の原因にもなるため、開発環境を改善したいと考えていました。
 
-SCRAP・黛さん

当社にとってもTAMさんにとっても、ブラウザゲームを制作することは前回が初めての挑戦でした。前作の制作過程ではコンテンツの細かな修正が大量に発生し、お互いに大変な思いをしましたので、今回はどう対応すべきかを事前によく話し合いました。microCMSを利用するというのはTAMさんから提案していただいたアイデアです。


microCMSを選んだ決め手を教えてください。

 
-TAM・中村さん

ほかの候補としてはGoogleスプレッドシートとNotionがありましたが、microCMSを選んだ決め手のひとつは最終的に書き出すJSONデータのきれいさです。スプレッドシートはSCRAPさんが普段から利用されているので有力候補でしたが、現実的に細かい変更対応するのに適していないと感じていました。Notionも検討しましたが、画像や動画を扱う際に別のストレージを経由する必要があるなど、今回の開発には合わない点が多かったです。その点、microCMSはUIもわかりやすく、APIの可読性の観点からも優れていると感じました。


活用の状況:SNSを模したゲーム画面をmicroCMSで設計

ゲームの開発中にどのようにmicroCMSを利用されましたか?

-TAM・中村さん
『サーチアカウント』は架空のSNSを舞台にしたゲームです。旧Twitterを模したER図やアーキテクチャを設計し、microCMSのスキーマ構造に落とし込みました。ゲーム終了時のエンディングページなどの一部を除き、ゲームコンテンツのほとんどをmicroCMSで管理しています。
 

選択肢を選んだりキーワードを入力したりといったプレイヤーの操作に応じてコンテンツを出し分けるため、microCMS内にフラグを持たせています。コンテンツ同士をリレーションでつなぎ、参照機能を使って「このポストが表示されたら、このフラグがONになる」「このフラグがONになると、リレーションしている別のコンテンツが表示されるようになる」という仕組みを設計しました。

(フラグの管理画面。最終的に13種類、425件のフラグが設定された)

(フラグの種類の一例)


リリース時の本番環境では、ビルドして書き出したものを使っていてmicroCMSのAPIを直接参照しているわけではありません。これは、ゲームデータが更新されることがほぼないためプレイヤーの通信環境に依存しないようにすることと、複数ユーザーが同時にプレイするにあたってゲームの進捗データをプレイヤー側のブラウザに持たせる必要があったための設計です。
 
-TAM・村松さん
microCMSの管理権限は、当社のエンジニアチームだけでなく、私たちデザインチームやSCRAPさんたちにも付与されていました。通常のウェブ制作やアプリ制作では、クライアント様からの修正依頼などはエンジニアが対応するケースが多いのですが、『サーチアカウント』ではそれぞれの担当者が自分たちで管理画面にアクセスして作業できたため、効率は格段に上がりました。

導入の効果:アジャイル的なゲーム開発手法にmicroCMSがフィット

microCMSを導入した効果はいかがでしたか?


-SCRAP・立さん
microCMSの管理画面はわかりやすく、TAM中村さんから操作方法を動画で丁寧に説明していただいたこともあり、当社社員やアルバイトスタッフでも簡単に更新作業を行うことができました。制作が佳境に入るにつれて修正箇所はどうしても増えていきます。前作では軽微な修正をエンジニアの方に依頼する心苦しさがありましたが、今回は心理的な負担もかなり減ったと思います。
 
-SCRAP・黛さん
普段のイベント制作ではスプレッドシートを共有して修正依頼箇所をお伝えしているのですが、今回の手法であれば我々にもテキストの修正ができますし、変更後のイメージもしやすかったです。
 
セリフの句読点をひとつ変更するような修正は、以前の制作体制であればあきらめてしまったかと思います。リリースの1か月ほど前に思いついたオマケ要素などを追加できたのも、エンジニアさんたちに余計な負担を掛けなくてよかったからです。今作ではいつも以上にクオリティを追求することができました。
 
-SCRAP・立さん

前作よりもゲームのストーリーは複雑になっています。フラグの個数やバリエーションを増やせたのは、GUI上での管理がしやすかったからだと言えると思います。『サーチアカウント』を前作と同じ開発環境で作っていたら、いまの数倍の工数が掛かっていたのではないでしょうか。

-TAM・村松さん
イラスト画像の差し替えなどはデザインチームが自分たちで行いました。制作に関わる人数が大幅に増えて、工数の集中が可能になっていたと思います。エンジニアがテキストの修正対応をしなくて済むため、ロジックの修正に注力できていたのはとてもよかったです。
 
-TAM・中村さん
前作がウォーターフォール的な開発体制だったとすれば、今作はアジャイル開発だったと思います。SCRAPさんたちは普段からリアルでのイベントをアジャイル的な手法で制作されているそうですし、TAMのデザインチームもイラスト制作などでアジャイル的な作り方をするので、そういう点での相性もよかったと思います。
 

microCMSを選んでよかったポイントはいくつもありますが、特に役立ったのは管理画面のフィルター機能です。ゲーム内には膨大な量のポストがあるので、フィルター機能で絞ってポストを探したり確認したりできたのはとても便利でした。

(登場キャラクター「ケン」の投稿をフィルターした管理画面)
 

「どのキャラクターの投稿か」「フラグをアクティベートしている投稿はどれか」といった条件でフィルタを掛けて判別できます。エンジニアとわざわざ連携せずにフラグの変更作業などができたのは、間違いなくこのフィルター機能のおかげです。


効果の高い制作プロセスをさらに追求していく

今後もmicroCMSを活用される予定はありますか?


-SCRAP・立さん
オンライン事業部ではこれからもブラウザゲームを制作していきたいと考えています。今回microCMSを使って『サーチアカウント』を制作したことで、私たちのやりたいことを実現する具体的なイメージが深まり、今後のゲーム制作の可能性が広がったと感じています。
 
-SCRAP・黛さん
気軽に使えるツールの選択肢が増えれば、クリエイターもさらにアイデアを出しやすくなるでしょう。たとえば当社ではLINE@を利用したイベントをいくつも制作した経験があり、LINE@についてはノウハウがかなり蓄積されています。microCMSについても同じように使いこなせるようになるといいですね。作りたいゲームとの相性もあると思いますが、企画の面白さをさらに引き出せる可能性があれば、どんどん利用していきたいです。
 
-TAM・中村さん
テストプレイを繰り返し行うタイプのゲーム開発には、microCMSはかなり便利なツールだと感じます。今回はまだ機能をフル活用できたわけではなかったので、さらに改善しながら次回作以降も利用していきたいと思います。
 

『サーチアカウント』詳細はこちら:https://realdgame.jp/searchaccount/



取材協力:エディット合同会社(ライター:藤井亮一 撮影 : 関口佳代)

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